museumingとは

ミュージアムでじっくり観るように

世界もしっかり観ることができれば

もっと自由に <いま> を楽しめる

 

わたしたちの「観」を表現して共有する、

新たなツーリズムの実践へ。

 

museuming our world
museuming our world

◆museum × ing = 世界を観る方法

 

 museumingとは、このゼミの造語です。

 世界的権威の英語辞典Oxford English Dictionaryにも、museumingという語は掲載されています。そこでは"museum going(ミュージアムへ行くこと)"という意味とのことです。

 しかしこのゼミでは、異なる意味と深い想いを込めて、使っています。

 

 たとえば美術館や博物館や資料館を意味するmuseumにingをつけて、ミュージアムで展示をじっくり観るように、わたしたちの「見慣れた世界」をしっかり観ることができれば、そこには新たな発見や驚きがあるかもしれません。

 そうして「見慣れた世界」を「見慣れぬ世界」に転換し、ワクワクしながら「世界を観る(=世界観)」を高いレベルで実践することが、museumingの第一目標です。

 さらにこのゼミでは、ただ観て(=インプットして)終わりではなく、ツイッターやインスタグラムやウェブサイトやブログなどを活用し、わたしたちの「観る」ことを文章と写真で表現して、他者とシェアすることを試みます。これがmuseumingの第二目標です。

 

 museumingを通じていろいろな世界観が表現され、多様な「観る」実践が交流していく果てに、どんなことが起こるのか/起こせるのか、わたしたちは実践しつつ、探究しています。

 このmuseumingは新たなツーリズムの方法であり、2021年の夏に6期生が考えたプロジェクトです。いま、わたしたちはツーリズム・リテラシーを修得する方法の一つとして、museumingの実験に取り組んでいます。

 

 既存の知識や教員の研究を「なぞる」ゼミではなく、ゼミ生も教員も知らない、新たな知を自分たちの手で見つけ出し、何度も失敗しつつ実験を繰り返し、社会に還元できるレベルまで高めていく――そんな大学水準のゼミを目指しています。


◆具体的な方法――4つのフェーズ

 

 現段階では、museumingは次の4つのフェーズで構成される、と考えています。 

 ①museuming-in ⇒ ②museuing-out ⇒ ③re-viewing ⇒ ④analysing

 

 

①museuming-in  

 

・ミュージアムほど、「観る」ことに適した場所はありません。

 まるで「観る」ためのジムであり、レッスンルームのようです。

・専門家が厳選して展示した美術作品や自然標本には、「観る」価値が

 充満しています。これらは「観る」トレーニングにとって、格好の対象です。

・じっくり「観る」ことを体験し、作品の価値と自分の志向性を発見し、

 自分自身の「観る」スタイルを育てることが、ミュージアミング・インの目標です。

 

<観るヒント>

・獨協大学の「キャンパスメンバーズ特典」を活用します。

 東博や近美や江戸博の常設展(無料)だけでも十分であり、

 ぜひ大学の公式ホームページを参照して、それぞれ活用してください。

 https://www.dokkyo.ac.jp/campuslife/museum/ 

(獨協大HP > 「訪問者別」で「在学生の方へ」を選択 > 美術館・博物館等の利用特典制度)

・観る方法の一案:

 (1)入口で展示リストを入手

 (2)気楽に一周し、全作品or気になる作品を三つ星評価、

 (3)ベスト3or三つ星作品に戻り、じっくり観る

 (4)「自分が気になる理由」を言語化(レビュー)する。

 ※「作品をみてから展示説明文を読む(先に読まない)」など工夫して、

   自分のスタイルを探究してみてください。)

⇒この方法を重ねれば、“自分の「観る」スタイル”や“自分の軸(何が好きか、なぜか)”を育てることができると考えられます。もちろんスタイルも軸も一つにこだわらず、更新し続けてください。

 

②museuming-out  

 

・ミュージアムでじっくり「観る」方法を、外の世界で意識的に実践します。

・旅先でも、日常でも、ミュージアミングのメソッドは応用可能であり、

 とくに見慣れた日常を「観る」ことで新たな発見を得るとき、力を発揮します。

・発見や驚きを他者とシェアできれば、「観る」ことで世界に違いを

 生み出すことも期待できます。これは次のre-viewingとつなげて実践します。

 

<tips>

・museuming-inの方法を応用します。たとえばフィールドを気楽に一周し、

 気になる対象を選び出したら、そこに戻ってじっくり「観る」こと。

 そこに発見や驚きがあれば言語化し、写真も撮り、re-viewingにつなげます。

・場所はどこでもOKです。むしろ意外な場所のほうが、面白いかもしれません。

 国内や海外へ遠出しても、あるいは自宅や学校や通学・通勤路でも、可能です。

 

・ソロでもグループでも活動でき、たとえば山手線1週、マニアック資料館巡り、

 駅そばレビューなど、いろいろ応用できます。ミュージアムにこだわらず、

 レストランや商店や交通機関や病院や工場など、地球上のすべての場所が

 museuming-outの対象になります。あとはアイデア次第です。

 

③re-viewing  

 

・レビューを書きます。自分の「観る」を言語化し、推敲して、表現を追求します。

・SNSを活用して「観る」ことをシェアして、自分の発見や驚きを発信します。

・レビューへの反応や評価を参考しつつ、自らの「観る」ことを再考します

 (これがre-viewであり、「いいね」やフォロワーの獲得が目的ではありません)。

・他者のレビューも参照して「違い」を楽しみつつ、自らの「観る」に活かします。

・ゼミで「合評会」と「分析会」を重ね、レビューの新たなスタイルを開発していきます。

 

<観るヒント>

・Instagram/Twitter/FacebookなどSNS、食べログ/じゃらん/googleマップなどクチコミサイト、

 そしてオリジナルのブログやホームページなどを使い、世界を「観る」ことを発信します。

・100字未満に限定する/同じ曜日に投稿する/対象を絞るなど、

 レビューの特徴を明確化したほうが、その読み手も書き手もわかりやすいと考えられます。

 (テーマ自由のレビューでは、かえって書きにくく、読みにくいようです。)

・アート作品の紹介だけが目的ではなく、自分の感想だけを語る「自分語り」も避けて、

 「なぜ自分がmoved(動かされた)のか」を、自分の言葉で書きます。

 アートに正解が無いように、レビューも一つの答えは無く、

 それぞれの「観る」スタイルを作り出すために、いろいろな文体を試してみてください。

 

④analyzing  

 

・仮説を立て、実験し、検証する一連のプロセスが、analyzingです。

 これぞ大学で修得したい、学び問う技法であり、ゼミで取り組みます。

 (1) 前回のレビューに対する合評会やネットでの評価を参考にしつつ、

 「次回のレビューでこうしたら、こうなるのでは?」と仮説を立てる。

 (2) 仮説にもとづき、新たな対象を「観る」。レビューをシェアする(実験)。

 (3) 自分/合評会/ネットの評価を参考に仮説を検証し、次の仮説を立てる。

 

<観るヒント>

・analyzing(分析)の方法に王道はありませんが、基本的な考え方はあります。

 その最も重要な部分をゼミで学び、グループで討論し実践します。

 またデータ分析に関する本、論文、記事などは図書館で入手できます。

・異なる思考や方法を共有できるため、一人/個人よりもグループで分析を試みてください。

 

・analyzing(分析)はゼミの研究活動にとどまらず、就職活動や卒業後の仕事などにも

 応用できるスキルです。稚拙でも独自スタイルを持つ人は、常識や流行や噂に流されず、

 世界を自ら「観る」ことができると考えられるため、単にどこかを旅してレビューを

 アップして終わりではなく、ぜひ分析に取り組んでください。 

 

◆  このプロジェクトの目的

 

・ミュージアムの展示を「正しく」理解することは大切であり、そのための知識や経験は重要ですが、しかしインプットするだけでは面白くありません。自分が何を観たのか、なぜ心が動かされたのか、を表現できるアウトプットも、探究するゼミ研究活動では取り組みたいと思います。

・アートやまちを観て、「なぜ自分はこれが好きか」「何が気になるのか」をじっくり考え、言語化することは、世界を「観る」ことそのものです。それは自分の世界観を育てることにつながり、また常にアップデートしていく(変化させていく)ことができます。もちろん卒業後も。

・museumingでは、「いいね」やフォロワーの多さを求めません。たとえば、新しい/多数派とは違う/とんがったレビューには「いいね」が集まらないことは、よく知られています。

・「コスパ」と「すぐ!」が優先される「マーケティング的思考(=市場化され過ぎた考え方)」が主流の現代社会で、新たな価値感を表現できるre-viewを、ツーリズム(観光)から実践することがmuseumingの現時点での目的です。

 

 「新たな世界観と価値観」を探究する、21世紀のリベラル・アーツとしてのツーリズム(観光)を大学のゼミで実践するのが、このゼミで理想とするMuseuming Tourismです。