ゼ ミ の 原 則
ここでは「演習の手引」を再掲し、また補足事項を加えて、山口ゼミの原則(ルール)を説明します。 応募を検討されている方は、本当に自分に適したゼミか、どうか検討願います。
◆ 山口ゼミの考え方
・メディアもツーリズムも一見すると華やかで楽しそうなテーマかもしれませんが、高度な社会学的想像力の学修を目的とする本演習では、多くの資料や文献を自ら収集して分析し、入念な準備と深い思考を試みたうえで毎回の授業に臨むことが全員に求められます。
・担当者は高水準の研究発表や発言を常に期待し、その具体的方法を提示し、実現することを期待します。こうした理由から、この演習は高度な思考と実践を求める指導を特徴とします。予め理解したうえで応募を検討してください。他のゼミ生たちと真剣に研究し、生涯にわたる知力と素晴らしい仲間を得ることに意義を見出せる方には確実に適した演習ですが、できるだけ楽をしたい方や努力することが苦手な方には、間違いなく不向きな演習です。
⇒山口が担当する「英語専門講読」や「基礎演習」などの受講生は体験済みと思いますが、山口は「理想の大学」の在り方を常に追求し、「時間と学費に見合った学びの機会」の提供を常に意識しているため、それと連動した「高い期待」を学生に求めること、つまり高度な思考と実践を求めることを厭わないよう心がけています。(もちろん、いわゆる「厳しい指導」が目的ではないため、ゼミ中は1秒間に10回ぐらいブラック・ジョークを言い続けていますが。)
「理想の大学」は人によって異なると思いますが、たとえば人生の重要な青年期に4年間も費やし、毎年100万円・卒業までに500万円近くも支払ったのに、「大学で何を学んだかわからない」「大学の授業では何も得られなかった」と思う学生が卒業式の日にいるようでは、何がどうあっても、それは「理想の大学」からは程遠い状況と考えます。
その逆に、高い理想をもった仲間たちと出会って切磋琢磨すること、一人では読めない書物を一緒に読んだり、単独では知り得ない考え方や知識を他者から得ること、また個人では利用できない高価なオンライン・データベースや海外の新聞雑誌などを活用し、さらに交換留学や交流イベントなどに積極的に参加することなどを通じることが「理想の大学」への具体的な道筋であり、それらを通じて大学に費やした時間と費用を回収することは可能であり、むしろ数倍の価値を生み出すこともできる、と考えます。
そうした能動的な大学生が多くいる大学は、確実に栄えます。その反対に、どれほど有名で偏差値が高い大学でも、「しらけた学生」と「つまらない授業」ばかりの大学は苦痛な場所です。「理想の大学」はわれわれが創るものであり、そのためには高い理想と、それを実現するための情熱と努力がずっと必要であるため、(すみませんが)教員の指導は自ずから厳しくなり、学生への要求は高くなる、と考えます。
結果として、山口ゼミは「大学生らしい研究をする集団(チーム)」でありたいと考えています。
・就職活動は強く意識します。ただし就活必勝法や小手先の技術などは教えません。たとえば30歳になったとき、自分がやりたいテーマが観えていて、それを実現できる環境と能力を創り出せるよう努力することが、本来の就職活動と考えます。そのため、演習での学びと卒業後の人生を切り分けて考えるのではなく、両者を連結させて高度な思考とコミュニケーション能力を育てることを、研究課題や演習での議論において常に求めます。
⇒私の学生時代の友人たちや過去の山口ゼミの卒業生が企業の人事部で採用事業を担当しているため、彼らの話を聞く機会があります。彼ら採用担当者は、年に数千人から数万人の学生(就活生)と会い、気が遠くなる回数の面接を経験しているため、小手先の就活対策テクニックなどは簡単に見破ることができ、そしてとても嫌う、ということです。つまり就職活動には正攻法しか効かない、とくに激戦が予想される会社を受ける場合には、日常のコミュニケーション能力だけが頼りになる、と考えられます。
そのため、ゼミでは自ら考えること、積極的に発言すること、他のメンバーと協調できるアイデアやポイントを探ること、などの正攻法を意識化し、また高度化するように指導します。このほかの詳細は3年次の終わりごろに説明しますが、本当に「やってみないと分からない。一番ダメなのは迷って何もしないこと」としか言えないのが就職活動です。
◆ ゼミの理想
・ゼミは大学で最も重要な場であり、とくに後半2年間の中心的な授業となるため、学生も教員も絶対に手を抜きべきではない、と考えています。
・ 本ゼミの担当者は関西大学で13年間、京都大学で5年間、そして獨協大学で6年間、演習を担当しましたが、毎年メンバーが入れ替わるため「これが同じゼミか?」と疑うほど、雰囲気も文化も毎年異なります。しかし共通するのは、「ゼミに入る前の成績はほぼ無関係であり、ゼミに入ってから研究の面白さに気付き、夏休みや春休みに勝手に研究する ぐらい学問中毒患者になった人ほど、良い卒論を書き、望んだ仕事に就き、そして卒業後に活躍している姿を見聞きする」ということです。そのため「研究することの面白さ」を味わってもらうことが、 ゼミの担当者にとって大きな課題です。
・ゼミの理想は、学生が山口から学問を習うのではなく、各ゼミ生が①努力することの価値を信頼する良いメンバーと 出会い協力して、②山口との緊張関係において高度な学問的思考を創造し、③山口を本気にさせて最新の知を引き出すことで、④それぞれが30歳になったとき に好き勝手な活動に邁進できる知力の基礎を築くこと、です。つまり「教員から習う」のではなく「教員から引き出す」ことに積極的に挑戦し、他のゼミ生と協力して高次元のゼミ研究発表を試みることです。
・これまでの経験では、いろんなタイプのゼミ生が集まっているときのほうが、みんなが優等生で同じような考え方をするときよりも、充実した研究ができるゼミになったと思います。そのためバラバラなタイプの履修者が集まってくれることを、勝手に願っています。
◆ 理想のゼミ
・「理想のゼミ!」と担当者が意気込んでも、しょせんは週1回・せいぜい2~3時間です。しかも1学期14回とすると、2学期=1年間で56時間ほど。ゼミの時間なんて、365日のうちの2日半に過ぎません。
この短い時間で「学べること」や「教えられること」は、とてもとても限られています。だから「課題の不提出」や「無断欠席」や「怠惰な姿勢」などを注意する時間は、できるだけゼロにしたい。まず社会学の考え方を学び、そして実践型プログラムに取り組み、ディスカッションする時間を確保すべきと考えています。
・同様に、週1回のゼミですべてのプログラムを終えることはできません。自ずから他のゼミ生と自主的に会い、図書館で文献を探したり、資料分析を分担したり、アイデアをすり合わせてレジュメを作成したりする、などのゼミ時間以外の研究時間が要求されます。こうした研究する時間を「拘束時間」と考える人は、このゼミに向いていません。絶対に後悔するので、履修しないでください。むしろ「それって大学っぽくていい」「大学にいる間ぐらい、真剣に学問をしたい」と前向きに取り組める方には、ぜひ履修していただきたいゼミです。
・いいかえれば、週1回のゼミは「本番」であり、その「本番」に向けて1週間のうちに各自で「練習」や「リハーサル」を重ねるのが、このゼミの理想です。
たとえば高校のときの部活動あるいは受験勉強を思い返せば、「本番」のために何カ月もトレーニングを重ねて、あるいは入試の数時間のために何カ月も何年も塾や自宅で勉強して、自分の能力を高めていたと思います。いきなり「本番」をむかえるなんて、あり得ないはずです。
ゼミでは、学問そして研究に取り組みます。それは野球部やバレー部やブラスバンド部の部活動、あるいは大学入試や高校入試よりも「簡単」でしょうか? なぜ高校時代には一日に数時間もトレーニングに励んでいたり、毎日何時間も受験勉強していた人が、大学での研究には週に一日も充てず、「本番」にむけた準備をケチるのでしょうか。あるいは、つまらない飲み会に文句も言わずに3千円を支払う人が、千円や2千円の学術書を買うことに抵抗を感じるのでしょうか。
このゼミは、そうした「精神的なケチ」には向いていません。たった週1回・2時間ほどの短いゼミなのだから、その「本番」を面白くすることに努力を惜しまない人に向いています。
たとえば、みんなや教員を「あっ」「えっ」「マジか」と言わせるために自ら工夫して「練習」や「リハーサル」に励むことができる人、山口から「ゼミ・サービス」なるものを提供してもらうことを待っている消費者ではなく、他のゼミ生と協力して良い研究を自ら創出し、「本番」にむけて前向きに工夫を重ねるクリエイティブな人の参加を待っています。
――そんな優秀な人は他のゼミに行ってしまうかもしれませんし、そもそもこの世にどれほど存在しているのか不明です。上記は、理想に過ぎません。しかし、ここで重要なのは、「精神的ケチ」になることを避け、限られた「本番」に向けて自ら努力することを「よし」とするタイプの人が集まれば、きっと良いゼミを一緒に創ることができる、という考え方です。
そうした考え方をゼミ生と共有して、より良いゼミを探求していくことが担当者の理想です。
◆ お願い/留学について/その他の相談
・課題の不提出、無断欠席、理由なき遅刻は認めません(事前に相談されれば配慮します)。本演習で最も問題となるのは、他のゼミ生のモチベーションや研究活動を害することであり、そうした問題行動を繰り返す者には受講停止を含めて厳しく指導します。
・受講停止などの措置が無い限り、3・4年次の2年間を通じて本演習を履修してください。
⇒このゼミでは、ゼミ生が教員と同じように考えたり行動したりすることを求める、または「全員で同じモチベーションを持つ」などの「全体主義的思考」や「山口の指導を鵜呑みにする信者的行為」は、最も嫌悪します。
基本的なルールを守ること、あるいはルールを守れないことを事前に相談して他のゼミ生や教員から合意を得ることを守ってくれれば、あとはみんながバラバラで、予想外の考え方や行動に挑戦するような学生が集まるゼミを理想とします。つまりは「無断」や「理由なき」という部分が問題であり、欠席や遅刻そのものが問題とは、少なくとも担当者は考えていません。
⇒ただし発表を担当する週に無断で欠席したり、グループ研究で他のメンバーと約束したことを履行せずにゼミに参加したり、稚拙なレジュメ発表を繰り返すなど、明らかに他のゼミ生のやる気を削ぐ様な行為を繰り返す者には、その理由の説明を求めます。そして合意が得られない説明の場合で、改善の見込みが無い場合は、演習の単位を出しません。
・ツーリズムを研究するゼミとして長期の旅行や留学などを応援します。事前に相談することを条件に、提出課題や出欠要件の調整などに可能な限り対応します。
⇒長期の旅行や留学を自粛しないよう、まずは相談されることを勧めます。大学生の特権を活かし、ぜひ海外への旅行や留学に積極的に挑戦されることを期待するためです。またお金がなくても、時間がなくても、きっと道はたくさんあるはずで、とにかく留学に興味がある方は教員に相談してみてください。
【追記】留学を予定されている方へ
・山口ゼミは留学する学生が毎年います。担当者も留学(1年や半年に限らず、数か月や数週間でも)を応援しています。ただし、必ずしも「留学し易いゼミ」ではないと思います。①留学予定者は、ゼミ所属が決まり次第、事前に山口と相談して行き先や目的を明確にすることが求められます。留学目的が「ただ語学を勉強したいから」「昔からの夢だったから」では、留学の効果はとても薄く、また帰国後にゼミの研究活動に追い付かないことが予想されるためです。②留学するゼミ生は、留学に出発するまでのゼミ活動で他のゼミ生よりも努力を重ねて、短期間でゼミの研究活動の方法を吸収すること、また帰国後には「他の学生のお荷物」にならないよう、独自のパフォーマンスを発揮する約束をすることを、求めています。
⇒これらの2点(出発前にしっかり学ぶこと、帰国後に独自の貢献をすること)を理解し実現できる方には、海外留学のチャンスを存分に活用し、ぜひ若いうちに異郷で暮らす経験、そして日本の大学とは比較にならないほどしっかり勉強する経験を得てほしい、と強く願っております。留学先での履修科目が獨協大学で認定される性質の授業ならば、合計4年間で卒業できるようゼミとして応援しますし、留学中に質問などがあれば担当者とメールで相談することもできます。
⇒ただ単に「留学し易いゼミ」を探しているだけならば、山口ゼミは適合しません。それでは本気でゼミの研究活動に2年間ストレートで取り組んだ他の学生たちの姿勢に圧倒されて、帰国後に後悔すると思います。これに対し、ゼミでしっかり学ぶことを決心し、そのうえで海外留学にも挑戦したい意欲的な学生を、山口ゼミは歓迎し、しっかり応援します。
◆ まとめ(およびプレゼミの情報)
・開講曜限は金曜2限の予定ですが、1コマ=100分では終わらないと思います。課外活動やバイトなどを調整し、ゼミの研究活動に主体的かつ創造的に取り組むことを求めます。
・夏合宿と春ゼミへの参加を必須とします。
・山口の担当授業「トランスナショナル・メディア論」「メディア社会学(トランスナショナル文化特殊講義)」「ツーリズム特殊講義(交流文化の思想を読み解く)」のうち1科目以上を3年後期までに履修し、本演習で学ぶ社会学の思考をさらに探究することを求めます。
⇒なお「英語専門講読」は、積極的に他の先生の授業を受講し、視野を広げることをおススメします。
・卒業論文の執筆は必須です。ただし詳細は集まったメンバーと相談して自由選択(任意)とする可能性もありますが、原則としては卒論を書くゼミです。執筆テーマは自由ですが、メディアやツーリズム(または両方)に関連する社会現象に着目し、演習で学んだ技法を実践することを推奨します。
⇒本サイトの別ページを参照。
・プレゼミ(ゼミ履修者の決定後から次年度のゼミ開講までにおこなうゼミ)は、多いです。例年12月から1月の間に4回か5回ほど実施し、2月初旬に4年生、3年生と一緒に2年生が参加する「春ゼミ」をおこないます。
これは、4月までに「文章表現法の基礎」「レジュメの書き方」「資料の探し方(図書館のデータベースの使い方など)」「社会学とツーリズム研究の重要概念の確認」などをひと通り体験してもらい、新3年と新4年による合同ゼミを高度なレベルでスタートするための方法です。
履修が決定した場合、必ずプレゼミに参加し、すべての課題を実現されることを期待します。