ゼ  ミ  の  内  容

 ここでは「ゼミの内容」のうち主要なプログラムを説明します。

 これは原案であり、実際には集まった履修者の希望や興味や学習履歴などを理解した後に調整し、最適化していきます。

 なぜならゼミの第一目標は「どんなゼミ生が来ても同じプログラムを実現すること」でも「教員が望むタイプの卒論を書くこと」でもなく、「ゼミ生が成長すること」であるため、ゼミを進めていくうちに演習の内容を柔軟に変更していきます。その結果として、たとえば課題が増えたり減ったりします(もちろん内容を変える前に、必ずゼミ生と教員が相談して、より良い方法を考えます)。 

 なお1期(2016年度)と2期(2017年度)は「訪日外国人向け英文ガイドブック」の制作に、3期(2018年度)は「100年前の観光を観光する」プロジェクトに、4期(2019年度)は「東京オリンピックで消えたもの/現れたもの」の研究に、5期(2020年度)は「わたし」ツーリズム写真集の制作に、6期(2021年度)と7期(2022年度)はmuseumingという「新しい観光」のプロジェクトを開始し、それぞれ取り組みました。そして8期(2023年度)はPICO Tourismという実験を開発し、9期(2024年度)は「世界観」をインスタのリールで表現するレビュー実験に挑戦しています。

 

 これまでの成果を継承して発展させ、来年度(10期)ではパブリックアートや芸術祭などの展示作品をレビューして表現する「新たな観光」の開発に取り組み、卒業論文(観論)の執筆と推敲、そして写真集の制作実習に挑戦するつもりです。ただし集まったメンバーの希望を考慮して、これらの原案を調整し修正していく予定です。

ゼミ生作品 (C) M. Sakamoto 『trans × views  journal』(2024年9月撮影)より
ゼミ生作品 (C) M. Sakamoto 『trans × views journal』(2024年9月撮影)より

◆ゼミの年間予定(案)

・ゼミの年間予定です。ただし集まったゼミ生の興味や特性に応じて、毎年じつに!いつも!大きく!変更しています。

・3年次には、このゼミ独自の研究プロジェクトMuseuming Tourism(後述)に取り組み、他のゼミ生や先輩たちと協力して、「観る」ための技能を養成します。欧米の大学でいうコースワーク型カリキュラムです。ここで修得した技能が、各自で自由にテーマを設定して取り組む「4年次の卒業論文/卒業制作」に活かされます。

・4年次には、各人の自由テーマで「卒業研究(卒論の執筆)」に取り組み、2年間の学びをまとめて卒業することを目指します。社会学のゼミの特徴として、テーマは何でもありです(学会に行くとびっくりするのですが、本当に社会学は「何でもあり」の学問分野なので)。ただし研究方法はいくつかあり、テーマに応じて最適な方法を教員が助言し、3年次の終わりから4年次の前期にかけて修得するのが理想です。

 

⇒年間予定をまとめれば、3年次で研究技能を修得して高度化を図り、4年次に自由テーマの卒論科卒制に取り組む、というかたちです。3年生と4年生が協力して(しばしば同じ班で)ゼミを作り上げ、また卒業した先輩たちが(仕事を休んで)里帰りして、本気で参加するのも、このゼミの特色です。


◆1.Museuming Tourismとその発展(「新しい観光」プロジェクト)

 Museumingとは、ミュージアム(美術館、博物館、アートギャラリーなど)でじっくり「観る」ことを実践し、同じようにミュージアムの外の世界もしっかり「観る」ことを通じて、自分の「観る」ことをレビューとして「表現する」ことを目指した、「新しい観光」のかたちを実現するプロジェクトです。

 詳細は、このサイトの別ページで説明しています。ぜひごらんください。

 

◆2.「ガイドブック×社会学」記事の執筆と推敲(3年~4年合同:チーム研究)

 ツーリズム・ガイドブックの「読みやすさ」と社会学的想像力の「見慣れた世界を見慣れない方法で観る思考(クリティカル・シンキング)」を掛け算した、独自スタイルの記事を前期(短編)と夏休み&後期(長編)に1本ずつグループで執筆します。(記事の例として山口が『地球の歩き方』グアム編に執筆した「ハガニア時間旅行」(110頁目ぐらいから12頁分)を書店や図書館などで参照してください。)

 

①総合テーマは履修メンバーが確定した後、担当者と相談して決定します。

 これまで財団法人・日本交通公社の「旅の図書館」(南青山)の協力のもと、同館が収蔵する日本語資料や訪日外国人(インバウンド)向けガイドブックなどを調べて取材し、記事を書く「観光を観考する」プロジェクトなどを実施してきました。

 

②前期は「推敲」の技法の習得をとくに重視し、後期はその高度な実践を試みます。

 

③研究成果は、毎年2月に発行するゼミのジャーナル『trans×views journal』に掲載します(100ページ以上のフルカラー雑誌)。さらに雑誌に寄稿する(2018年)、国際研究大会に出場する(2019年)、TwitterなどSNSを活用した実証実験を行う(2020-22年)、学会で研究発表を行う(2023年)、研究会で発表し国内外の研究者に指導してもらう(2024年・予定)などの情報発信を試みます(毎年いろいろ挑戦中)。

 

 徹底した取材と執筆と推敲により、書き手と読み手の双方が「観る」ことを転換するような「良い記事」を創ることを目指します。

 

⇒作文技法の基礎(山口ゼミの文表表現法)を4月から5月に学び、個人単位の訓練を重ねた後、3人一組で上記の「作品」を制作します。簡単なようで、とてもとても難しい作業です。とくに「推敲」を重ねていくことで、最初の文章よりも悪くなる場合があり(残念ながら一度は全員が経験すると思います)、その期間は「吐血ゼミ」以上(以下?)の「地獄絵図」となります。

 しかし、地獄の苦しみを経験し、そこから自力で浮上し、合評会で高い評価を得ることができれば、きっと「推敲」の方法を自ら体得することができる、と考えています。

 「推敲」は山口ゼミがもっとも重視するキーワードであり、ゼミで制作する「作品」のほかにも、おそらく人生のすべてのシーンで使える、一生ものの知の技法です。

「推敲」の詳細については、このサイトの別のページを読んでください。)

 

◆3.写真集『trans × views』の制作 (夏合宿:ワークショップ形式)

 写真術の基本を講習した後、複数のゼミ生と相互にインタビューしながら撮る/撮られる撮影実習を行ない、全員の作品を全員で観て合評するワークショップを体験します。異なる視点から「観る」ことと「観られる」ことを体験し、複数のイメージを比較することで、「観る」ということを探究する材料を得ます。合宿後には全員の作品を収録した写真集を制作し、上述の『trans × views journal』に掲載して、全員に配布します。

⇒このプログラムは山口ゼミ1期から続く「伝統のワークショップ」です。他者を自ら撮影した写真と、他者が自分を撮影した写真の両方を、スクリーンなどに大きく投影し、他のゼミ生の評価にさらされることで、自らの「観る」力をはっきりと理解することができる、人気のプログラムです。

 なお、このサイトに使用されている写真のうち、各ページの一番したにある写真は過去の夏合宿で撮影した写真作品(一例)です。

写真集「trans×views」の一例(表紙)。学生投票一位の写真 (c)K. Matsukura
写真集「trans×views」の一例(表紙)。学生投票一位の写真 (c)K. Matsukura
ページの一例。予想以上に「観る」ことがうまい! (c) T. Hidai, (c)N. Kinoshita
ページの一例。予想以上に「観る」ことがうまい! (c) T. Hidai, (c)N. Kinoshita

◆夏合宿について

 

ゼミの夏合宿では、飛行機や鉄道で遠出するフィールドワークなどは予定していません。

・そのかわり、せっかく都心に近い大学にいるため、2泊3日の日程で東京・代々木の国立研修施設に滞在し、「museumingの高度なチーム実践」「写真集trans×veiwsの制作」「ディスカッション・スキルの向上プログラム」の3点を行なう予定です。

・たとえば合宿初日の午前には、東京都写真美術館(恵比寿)などを全員で訪れ、合宿及び後期のゼミ研究活動に役立つ「ネタ」を仕入れてから、合宿施設へ向かいます(ミュージアムは「観る」ことを考えるうえで格好の施設です。なお獨協生はキャンパスメンバーズ制度により無料で入館できます!)

・2日目には総合テーマのもと、みんなで都内や近郊の目的地を訪れ、3人一組で取材してレビューを書いたり夜のゼミで発表したりする「museumingの拡大版」を予定しています。

・だいたい1学期分(100分×14コマ)ぐらいのゼミをやります・・・・ちょっとハードです。

・参加費は2泊3日で1万3千円ぐらい(2024年の金額。3日間の宿泊、食事代金、打ち上げ代(飲み会代)などほとんどの費用を含む)、9月の中旬から下旬(秋学期開始の直前)に実施することを予定しています。なお、このゼミ募集サイトの写真は、夏合宿での成果の一部です。


◆春ゼミについて

 

・4年生と3年生と2年生の3世代が交流するため、2月上旬に大学キャンパスで「日帰りイベント」を実施しています(=春ゼミ)。

・3つの学年がそれぞれの自己紹介を兼ねて写真を撮り合い、合評会をおこなって最優秀作品を決定し、後日に作品をまとめて『写真集trans×views』特別編を制作するなど、このゼミらしい交流の方法を実践しています。夕方からは、大学の近くの居酒屋で「2年生の歓迎会&4年生の送別会」をおこない、3学年のゼミ生たちが夜遅くまで(?)語り合ってます。

・卒業後に同じゼミの先輩や後輩と一緒に仕事をするケースが時々見られるため、春ゼミは「すべてのゼミ卒業生が自由に参加できるイベント」として開催していければよいな、と考えております。

・夏合宿と春ゼミの打ち上げには、卒業した先輩たち(旅行会社や航空会社で働く人、大学院に進学した人など)が参加し、卒業後のリアルな生活などを話しつつ、現役ゼミ生の「お悩み相談」をしてくれています。(たぶん教員の指導があまりに非人道的なので、後輩たちが死なないようにケアしに来てくれているようです。優秀な卒業生たちに感謝です。)


◆ゼミの開講形態について

 

・3年生と4年生が合同して一つのゼミをつくる「3・4年合同」で開講する予定です。4年生が卒論や就職活動に取り組む姿を3年生が見て育ち、また3年生が4年生の卒論(下書き)を読んでレジュメ化しコメントを述べるようなプログラムを実行して、学年を超えて交流できればと考えています。

・ゼミの曜日と時限と教室は未定ですが、教室の都合がつけばこれまでと同様に金曜2限を予定し、150分~160分ぐらいで開講する予定です。つまり金曜10時55分から13時20分ごろまで、休憩を1~2回入れて学び問う、というイメージです。

・獨協山口ゼミは、いよいよ10年目を迎えます。おかげさまで獨協そして交流文化でのゼミのやり方が少しは分かってきたつもりですが、しかし今後も「集まったメンバーに最適化すること」を大切にして、どんどん改良し続けていきます。おそらく試行錯誤を重ねることになるため、たとえば課題やスケジュールがしばしば変更され、読むべき文献や訪れるべきミュージアムやフィールドが追加されると思います。そうした真剣なゼミの「ドタバタ」にお付き合いしてもらえる、または一緒に知恵を絞って、より良いゼミを創造することを楽しめる方を、心からお待ちしています。

 

ゼミ生作品 (C) N. Natsuake 『trans × views  journal』(2024年9月撮影)より
ゼミ生作品 (C) N. Natsuake 『trans × views journal』(2024年9月撮影)より